困りごと”のランク付けをする

あなたが今“困っている”と感じている事を、その“深刻度”と“問題解決の困難度”の2つの項目別に、ランク付けしてみましょう。

●深刻度/負担に感じている度合いが高いもの=Aランク、低いもの=Cランク、その中間のものをBランクとします。
●問題解決の困難度が高いもの=Aランク、低いもの=Cランク、その中間のものをBランクとします。
※ストレスっチェックテストの診断結果で指数が高く出た“困りごと”は、その“深刻度”のランクを高くします。

困りごと 深刻度(負担に感じている度合い) 問題解決の困難度
1 A A
2 A A
3 B A
4 B B
5 C C

 

個人の対処能力には限界があり、すべての問題を一度に解決することは不可能です。ですから複数ある“困りごと”にランク付けをすることで、取り組む順番(優先順位)を決定するのです。その際に、次の2つの原則を適用します。

原則1:問題解決の困難度が低いものから高いものへ取り組む。
原則2:問題解決の困難度が同じ場合は、深刻度の低いものから優先して取り組む。

▼その他、次のような点も考慮して、取り組みの優先順位を決めていきましょう。

●いますぐ取り組まなければあなた自身に大きな不利益をもたらす緊急度の高い問題であれば、困難度が高い問題でも、例外的に優先して取り組むようにします。
●すべての“困りごと”に関して、あなた単独で取り組まなければならないと思い込まずに、周囲のサポートを得ることはできないか考えてみましょう。周囲のサポートを得やすい問題であれば、あなた単独では解決が困難に思われる問題でも、“困難度”が低くなる可能性もあります。
●その“困りごと”が今後どのくらの期間続きそうかも考慮して、優先順位を決定します。その“困りごと”が近い将来になくなる可能性が高い場合は、解決に向けた努力はあえてせずに、成り行きに任せた方が賢明な場合もあります。

2 “対処方法”のリストアップと絞り込み
対処方法”のリストアップ
STEP.2で明らかになった対処すべき“困りごと”に関して、どんな方法で対処していったらよいかを次に考えます。
思いつく限りたくさんの対処方法をリストアップしてみます。その際に、その対処方法が本当によいのか、実行できるかなどの判断はいったん棚上げにします。

具体的な対処方法
1 例)仲のよい同僚に相談する。
2 例)自分の専門性を磨きなおす。
3 例)一週間の予定を立て、一日ごとにやり終えるよう頑張る。
4 例)納得のいくまで努力する。
5 例)窮状を大学の恩師に打ち明ける。

 

▼対処方法にはそれぞれ次のような特徴があります。その長所と欠点を把握した上で、どんな対処方法が有効か考えましょう。

積極的コーピング

対処方法の内容 特徴
積極的に解決を図る “困りごと”を生じさせている状況を調査・分析し、解決のための具体的な
計画を立て、それに基づき行動します。“困りごと”に真正面から取り組む
わけですから、 問題の根本的な解決につながり、成功すれば最も
メリットが大きいと言えます。しかし、困難度の高い“困りごと”に
この方法を用いると、解決に行き詰まり、自信を失う恐れも
あります。そんな場合は、周囲の人に援助を求めたり、問題から
一度離れてみるなど、他の対処方法に柔軟に切り替えることも大切です。
周囲に相談する 周囲の人に相談することで、
1. アドバイスや指示などの無形のサポート、
2. “困りごと”を解決するために必要な物資やマンパワーなどの有形の
サポート、
3. 共感や励ましなどの情緒的なサポートが期待できます。ただし、困難度の
低い、または解決方法がよく分かっている“困りごと”ならば、あなた単独で
解決してしまった方が効率的かもしれません。

消極的コーピング

対処方法の内容 特徴
問題を放置する とりあえず問題から距離を置いて、考え方を変えたり、気持ちを
落ち着かせたりする場合や、問題の解決を先送りにし、状況に身を
任せる方法です。 この方法は問題の根本的な解決にはつながらず、
ストレス反応が重くなる危険性もあります。しかし、対処が難しい
問題に対してや、問題が山積みになっているような場合には、
とりあえず問題から離れることで、エネルギーを蓄え、態勢を
立て直した方が賢明な場合もあります。特に物事に熱中しやすい
人や、割り切りが下手な人は、この対処方法を有効に使いましょう。
解決を諦める 直面している“困りごと”を負担に感じても、積極的コーピングを
実施せず、我慢する方法です。この方法も問題の解決にはつながらないため、
ストレス反応が重くなる危険性があります。ただし、“困りごと”を生み
出している状況をよく観察し、適切な解決方法を慎重に選ぶために一時的な
我慢が必要な場合もあります。特に行動に移すのが早過ぎて失敗する傾向が
ある人や、感情的になりやすい人は、この対処方法を有効に使いましょう。

STEP.4 対処方法の絞り込み
次に、「これならばすぐに実行できそうだ」と思われる対処方法を3つ程度に絞り込みます。

▼次の4つのポイントを考慮し、できるだけ負担が少なく、有効度の高い対処方法を選択しましょう。

(1)その方法を実行するのに、どの程度の時間や労力を費やさなければならないか?
(2)その方法を実行することで、日常生活にどの程度支障をきたすか?
(3)その方法は、問題解決にどの程度役立つか?
(4)その方法は、“困りごと”から生じる負担感や苦痛の緩和にどの程度役立つか?

3 コーピングの実行
STEP.5 コーピングの実行
STEP.4で絞り込んだ具体的対処方法をいよいよ実行に移します。その際に、次のような工夫をすると、よりスムーズに実行できます。

(1)最も自信のある方法から実行に移しましょう。
STEP 2で最も困難度が低いと判断した”困りごと“に対して、あなたが最も自信のある対処方法を実施してみましょう。最初から困難度の高い“困りごと”に取り組んだり、自信のない対処方法を実施しようとしても、ハードルが高過ぎて、尻込みしてしまいます。
(2)他人の対処法を観察して、まねる。
あなたが実行しようと思っている対処方法と似た方法を用いている人を観察し、それをまねてみましょう。たとえば、“仕事量が多過ぎる”という困りごとに対して、“仕事を上手に断る”というコーピングを実施し、成功している同僚がいれば、その人を観察し、その断り方をまねてみるのです。
(3)リハーサルをする。
同僚や家族に相手役を演じてもらい、実施しようと思っている対処法をリハーサルしたり、頭の中で対処場面を具体的に思い描きながらイメージトレーニングをしたりすると、さらに自信が深まります。

▼“困りごと”に対して複数の対処法を組み合わせて実施した方が、努力が長続きします。
たとえば「仕事量が多過ぎる」という困りごとがあるとします。その場合……

1. 自分の作業効率をアップする努力をする、
2. 同僚に手伝ってくれるよう働きかける、
3. 時には仕事から離れてゆっくり休息を取る
……といった複数の対処方法を組み合わせて実行した方が、対処努力が長続きします。

応用編:ストレスマネジメントの具体的方法
ケーススタディ

4 ケーススタディ
登場人物 基本DATA

氏名・年齢 高田さん(32歳)
勤務先 商社の管理本部勤務
現在の業務内容 給与体系の改定にチーフとして携わる。
ストレス反応 ●ルーティンワークは問題なくこなせる。しかし、懸案の給与制度の
見直しをじっくり考える気になれず、プレゼンテーションのための素案
づくりにも集中できず、悩んでいる。
●『Co-Labo』診断結果の“ストレス反応総合診断ポイント”も平均より
高くなっており、特に“抑うつ感”を強く自覚しているという結果が示されている。
例)二人の上司からの説明が矛盾して困ることが多い。

高田さんの実施したストレス対処法

STEP.1 “困りごと”のリストアップ
高田さんがリストアップした具体的な“困りごと”は以下の通りです。1と2は「仕事のコントロール」、3は「仕事の負担(量)」の典型的な事例であり、『Co-Labo』の診断結果でも各々に相当する項目の指数が高くなっていました。

1 業務内容が不明瞭。
●給与体系改定プロジェクトの責任者である部長の方針が取締役の
意向で頻繁に変わるため、何をやっていいかよく分からない。
2 裁量権が不足している。
●部長は給与体系改定に関して自分の考えを持っておらず、取締役の
意向を丸投げしているだけなのだ……。ならば何も言わず任してくれれば
いいのに、私の提案にはいろいろと注文をつける。自分はこのプロジェクトの
チーフだが、結局何も決められず、部長の気まぐれに翻弄されているような気がする。
3 常に時間に追われている。
●1の“困りごと”とも関連があるが、プロジェクトのリーダーに確固たる
方針がないため、中長期的な計画が立てられず、いつも短時間で場当たり的な
準備や対応を迫られている。
4 部下のやる気のなさ
●最近配属になった新人のF君が海外本部を希望していたのに管理本部配属に
なったためか、『心ここにあらず』の状態で、困っている。期待していたのに…。

STEP.2 “困りごと”のランク付け
STEP.1で列挙した4つの“困りごと”を高田さんは次のようにランク付けしました。高田さんの抱えるストレス状態を根本的に解決するためには、Aランクの“困りごと”に取り組まなければなりません。しかし、“抑うつ感”を抱える高田さんは、そんな精神状態でも無理なく取り組むことができるCランクの“困りごと”に先ず取り組むことにしました。

困りごと 深刻度
(負担に感じている度合い)
問題解決の困難度
1. 業務内容が不明瞭。 A A
2. 裁量権が不足している。 A A
3. 常に時間に追われている B A
4. 部下のやる気のなさ C B

STEP.3 “対処方法”のリストアップ
“困りごと4”に対処する具体的な方法を高田さんは思いつく限り、次のように列挙してみました。

具体的な対処方法
1 もうしばらくF君の様子を見てみる。
2 F君に給与体系改定の必要性を説明する。
3 F君に1週間単位の業務遂行ノルマを課する。
4 F君に海外本部についての思いを語らせる。
5 F君の件も含め、自分が抱えている“困りごと”について直属の上司の課長に相談してみる。

STEP.4 対処方法の絞り込み
STEP.3で列挙した対処方法の1は、消極的なコーピングの典型的な事例です。ただ静観するのですから、日常業務にも、人間関係にも何の支障も生じませんが、問題も解決しません。それに対して2と3は、問題解決に向けた積極的なコーピングの具体的事例です。ただし、気持ちが通じ合っていないと、F君の感情的な反発を招き、人間関係のもつれに由来する負担感がさらに強まる恐れもあります。そこで高田さんは、思い付いた5つの対処方法を、比較的労力や負担感が軽く、ある程度の効果も期待できる4と5の2つに絞り込みました。

STEP.5 コーピングの実行
●コーピング4の実施
「海外本部についての思いを語らせる」のコーピングを実施したところ、F君は高田さんに本音で気持ちを打ち明けてくれました。さらに、話し合いの中でF君も高田さんの悩みが、担当部長の丸投げと日和見的な態度にあることを承知していることが分かりました。互いの気持ちが通じ合った結果として、F君は管理本部の業務に対してより積極的にかかわる姿勢を見せ始めました。
●コーピング5の実施
高田さんは直属の上司である課長に、STEP 1で列挙した“困りごと”全般について相談してみました。すると、課長も担当部長の日和見的な態度に高田さんが振り回されていることに対して同情を示してくれました。問題の根本的解決にはつながっていませんが、このように周囲から情緒的なサポートを得ただけでも、高田さんの“抑うつ感”は大きく解消されていきました。次に、「これならばすぐに実行できそうだ」と思われる対処方法を3つ程度に絞り込みます。

相談コーピングのひとつとして、 カウンセリングも積極的に活用しましょう。
“相談コーピング”を実施しようと思っても、周囲に適当な相談相手が見付からないといった場合もあります。そんなときは、相談先のひとつとして、カウンセリングを積極的に活用しましょう。カウンセリングは、あなたが所属する部門の上司や同僚、人事部門などを介せず、あなたが必要だと思ったときにいつでも利用できます。また、あなたがカウンセリングを利用したという事実も、相談内容も、あなたへの事前の承諾なく、他人に知られることは絶対にありません。ですから、あまり構えることなく、カウンセリングをもっと気軽に利用しましょう。特にひとりで問題解決に取り組んではみたものの、行き詰まってしまったときなどは、第三者の客観的なアドバイスが閉塞状況を打破するきっかけになる場合も少なくありません。

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